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前書き
当然ですが、日本やアメリカ以外でも映画は毎年公開されています。インドや中国、イギリス含むヨーロッパ諸国など、挙げるのも馬鹿らしくなる話ではあります。
しかし「言われてみればその国の映画を観たことがないかもな」となる国も当然存在します。私が最初にそう思った国はメキシコでした。きっかけはルイス・ブニュエル。サルバドール・ダリの友人でもある彼の映画はどれも刺激的なものばかりです。その辺の話はまた後日にでも。
今回はそんな「言われてみればその国の映画を観たことがないかもな」と言われそうな国の短編映画です。
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prelusion
チリの映画です。
ピノチェト独裁政権下、クーデターの疑いをでっち上げられ行方不明となった若者達の名前をストップモーションアニメとともに淡々と音読していく、そんな内容です。
あなたの服は また着られるようアイロンをかけてある
かび臭くなったら また洗う
服もあなたを待っている
赤いシャツも ポットもラジオも待っている
歯ブラシも櫛も待っている
コンデンスミルクの缶も おもちゃのコマも
玄関のドアも サッカーのグラウンドも
どこのいるの? 愛しい娘 愛しい息子
帰ってきて パンくずの道標を残すから
戻ってきて 誰にも邪魔されずに
子どもたちの名前を呼ぼう
この映画を初めて観た時、チリに関して縦に細長いこと以外何も知らないことを思い知りました。単に知るきっかけがなかっただけとも言えます。私の場合はただでさえ世界史などが苦手分野なので致し方ありません。
こんな世界史ヘッポコ人間の私でも、映画の力があればその国を知ろうと思わせてくれるのです。この『名前のノート』はたった8分の短編ながら、私の意識を大きく変えてくれた、とても力の強い映画です。
本編中、軍に怯えながら我が子と暮らす保護者の心境が淡々と朗読されています。だのに、最後に我が子は連れ去られてしまう。そして上記のセリフの後に実際に連れ去られた若者の名前を淡々と延べ、映画は終わります。
二人の娘を持つ自分にとって、それこそ胸が張り裂けそうな、とても強い痛みを覚えました。
しかし、その強いつよい痛みは、そのままこの映画の魅力にも繋がります。8分という短い時間の中で映画から発せられる悲痛の叫びをダイレクトに浴びました。
胸が張り裂けるほど苦しいから二度と観たくない。それなのに、また再生してしまう。何故でしょうね。
ちなみに本作は『ハイパーボリア人』という映画の上映前に併映されていました。こちらも同じ監督作でとてもおもしろいので、機会があれば観てください。